HERMIT 研修室内 訓練ルーム
地下3階にある、訓練ルームは、射撃場、格技場を始めとして最新の設備を整えている。HERMITのメンバーは、例外を除いてこの訓練ルームで基礎トレーニングを受けている。
訓練室にあるミーティングルームの前で橘 竜は、立ち止まった。
「橘 竜、入ります」
「どうぞ」
中に入るとそこには、30代くらいの男が立っていた。背は、180センチくらいか…
『この人が、噂の鬼隊長?』
橘が聞いていた噂とは違う。背丈は、190センチはあり類まれな筋力の持ち主で眼光鋭く、その威圧感だけで失禁するものが出たという…しかし、目の前にいるのは…
「残念ながら私は、鬼隊長と呼ばれるあの方ではないですよ」
目の前の男は、心の中の問いに涼しげに答える。
「君の疑問は、これから私が話すことで解決するから、そのまま聞いてくれ」
さすがにHERMITのメンバーといったところか、自分の所作で心が読まれたらしい
「鬼隊長は、急遽出張に出た。その代わりに後事を自分に託したという訳だ。私の名前は、服部重治(はっとり しげはる)。鬼隊長の後輩にあたる。一応、私も部隊長をやっているが、あの人に比べたらまだまだといったところだ…ここまでで質問は?」
「自分は、服部隊長のもとで働くという理解でよろしかったでしょうか?」
「うん。その通り、よい理解力だ」
「ありがとうございます」
「そんなに堅くならなくていいよ。それに君は、私の能力に近い…」
「僕の能力に近い…」
「そう…瞬間分析能力…派手さはないが部隊戦術では必要な力であると私は思っている」
「つまり部隊戦術において、この瞬間分析能力の生かし方を学ばせるために…」
「そういうことだ」
橘は、深く納得した。
「ということだから、しばらくは、私と行動を共にしてもらう。君の通う学校も休みだしな」
「解りました。よろしくお願いします」
1時間ほど射撃訓練をした後、二人は研修所を服部の車で出た。
服部は、普段はスポーツインストラクターをやっているらしい。
確かに、時間に融通の聞かない職種では、『HERMIT』の活動に支障が出ることは間違いない。
そして、いつしか話題は、『HERMIT』の状況についての話になっていった。
「焦っているのさ」
「政府がですか?」
「みんなさ」
「みんな…ですか…」
「最近の特殊能力者犯罪の増加は異常だ…それに…」
「それに?」
「最近、報告が増えてきた遺伝子異常を起こした生物の話…」
その事に関しては、橘も気になっていた。
「その件に関するレポートは、目を通しました。通常の武器が効きにくいという…」
「結果、こちらに仕事がまわってくる…が、人手不足は否めない…」
「なるほど…」
「といっても…やるしかないがな…」
「はい」
車は、都内に向かって走っている。
「そういえば橘は、彼女とかいるのか?」
「残念ながらいないですよ」
「…本当か?」
「本当ですよ」
橘は、この手の話は、苦手なだけに、話を切り返す
「服部さんは?」
「俺か?俺は、結婚をしてた。」
「離婚ですか?」
「いや…死んだんだ…」
「すいません。いやな事を…」
「いやいや、気にしないでくれ。その代わり娘がいるんだ…」
「そうなんですか。お幾つなんですか?」
「もうすぐ、3才になる…今の俺は、娘のために働いているといっていい」
家族…橘 竜にとってつらい響きだ…
「娘は、ちょっと病気がちでな…正直、お金がかかる。それだけにリスクはあるが、給料の良い『HERMIT』の仕事は、非常に助かっているんだ。」
娘を思う、父の話。橘は、心安らいだ。
「パパさん、頑張りどころですね」
そんな橘の言葉に服部は照れて、アクセルを踏み込んだ
高速を走る車は、都内に入っていった。
...to be continued.